人生を豊かにするために、本当の自分に気づこう。「ビジネス内観研修」の株式会社エナジャイズ

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社長内観体験記



<エナジャイズ創立>

平成十年秋、私は二十年勤めたJ社を退職し、ビジネスパーソン向けの教育を提供しようと、株式会社エナジャイズを創立しました。ちょうど、私の五十二歳の誕生月でした。

当時はバブル経済が破たんした後始末で世の中はリストラの真最中、日本中の元気がなくなっていた時代でした。ちなみに社名の意味は、「元気になる」という意味で、ビジネスパーソンが元気になる教育を提供しようじゃないかという意気込みで命名しました。

社員は私を含めて四名で、飯田橋の十坪のオフイスからスタートをきりました。不安がないわけではありませんでしたが、独立する前は研修講師をしていたせいか妙な自信がありました。なによりも全員が、やっと会社設立にこぎつけられたという喜びでウキウキしており、私も「なんとかなるのではないか」と前途に対しては楽観的に考えていました。

しかし、いざ独立してみると経営の厳しさは予想以上でした。「知っていることとできることとは違う」と申しますが、その通りだったと思います。

思ったように業績は上がらず、資本金一千万円はどんどん管理費(主に人件費と家賃)で減っていきました。


<社長!お金がありません>

それは、会社を設立して二年目の八月の蒸し暑い日のことでした。
経理担当の社員から、「預金残高があと・・円しかありません。給料の支払いどうしましょう」と突然言われたのです。その日以来眠れぬ夜が続くことになりました。
なんとか打開しようと会議が深夜に及ぶことがしょっちゅうでしたが、経営方針をめぐって衝突し罵声が飛び交うような有様でした。業績も社員との人間関係も最悪の状態で、会社が立ち行かなくなるのは時間の問題でした。そして、とうとう、二名の社員の方とは袂を分かつことになり、私と経理担当のNさんという女性の二人だけになりました。
すっかり疲れ果ててしまった私は会社の代表という立場にもかかわらず家に引きこもるようになりました。昼間から酒を飲んでは憂さ晴らしをするような毎日で生活は荒む一方でした。
そんなときに、ある印刷会社の役員をされているお客様を訪問したところ、「内観」を勧められたのです。
「いっぺんいってきたらどうですか、すっきりしますよ」と言われて、なぜかすぐに「はい、すぐ行ってみます」と答えている自分がいました。
「溺れる者は藁をもつかむ」といいますが、その時の私は経営も精神も完全に行き詰っておりましたので、ひょっとしたら会社も自分も良い方向に変われるきっかけになるかもしれないと思ったからです。
季節は十月に入り、事務所の前の大銀杏の木も上の方から黄ばみはじめ、東京はようやく秋の気配を見せはじめておりました。


<内観に取り組む>

「内観研修所」では、6畳の和室の片隅に屏風を立て、朝六時から夜九時までトイレと入浴と寝る時以外はその中に座り、一週間続けて「内観」をいたします。
食事は面接者に屏風の前まで持ってきていただき屏風の中でいただくのです。
注:「ビジネス内観研修」は病気を治療するための心理療法ではなく、ビジネスパーソンを対象とした人間力向上のための集合研修です。「内観」の基本を体得していただく研修日程は一泊二日が基本です。また、楽に安心して「内観」に取り組めるように教室で椅子に座る方式での「内観」にしています
「内観」というと少々堅苦しいイメージがあるかもしれませんが、「内観」の方法はいたって簡単です。
①「していただいたこと」
②「してお返したこと」
③「ご迷惑をおかしたこと」
の三項目に関して、小学校低学年、高学年、中学、高校、大学とそれぞれの時期ごとに、母親や父親や配偶者や上司や部下などに対する自分の言動を具体的に調べるだけです。
「内観」では、「調べる」といいますが、それは自分の本当の姿を、他人の目で客観的に、しかもごまかすことなく厳しく見つめるからです。
そして、一時間か二時間に一度の割合で、面接者が回ってきて、屏風の前で一礼し、屏風を開けて内観者と対面します。
注:私どもの「ビジネス内観研修」では、個別に面接室で面接したします。


<母の愛を知る>

母に対し、小学一年から小学三年までの自分を調べていたときには、薄暗い裸電気の下で、丸くなって墨を磨り、筆を口先で湿しながらそれは丁寧に、上ばきを入れるためのぞうり袋、黒色のズック製の上ばき、白色の運動靴、黒革のランドセル、教科書、ノート、運動会用の紅白の鉢巻に私の名前を書いている母の姿を思い出しました。それは、私が小学校に入学するための準備でした。
なぜかその後に、小学六年の運動会で紅白の鉢巻を落としてしまい、校内放送で、「一年二組の菊池君、鉢巻が届いています」とアナウンスされたことを思い出しました。友達や先生から「菊池君は物持ちがいいね」と笑われ、私は恥ずかしくてたまりませんでした。
家に帰り、口をとんがらせて、母に新しい鉢巻を買ってくれないから笑われたと話すと、台所で菜っ葉を刻んでいた母はクスクスと笑うのでした。
てっきり、なだめてくれるものと思いこんでいた私はちょっとがっかりしましたが、なんだか幸せなきもちになり、母と一緒に笑っていました。そんな幸せだったそのころの情景が目の前に浮かびあがりました。
そして、当時はめったに新しいものは買わず、いったん買ったら長持ちさせるのが普通だったことを思い出しました。母の書いた墨は消えないので、私は小学校の六年間、ずうっと一年二組と書いてある鉢巻をしめていたと思っていましたが、そうではなくて、私は母の愛をしめていたことに気がつき、ひとり屏風の中で泣きました。


<自分を知る>

内観をしていくうちに、母から愛されていなかったどころか、母はとても細やかな愛情をそそいでくれたこと、母から奪うだけで与えることが何も無い自分であったこと、そして、同じことを家族や友人、部下にもしてきたことに気がつき愕然としました。人間関係が苦手なのは自分自身の自己中心性のせいでした。
このように内観をしているうちに、「していただくこと」が当たり前と考えていた自分の生き方に気づき、両親・兄弟・私の家族・社員に対する申し訳なさで一杯になりました。 奪うだけの自分に、両親をはじめ多くの人が支えていてくれたことがわかり、感謝の気持ちがこころの底からふつふつと湧いてきました。
そして、これはとても不思議なことですが、内観を終えてみると実にすがすがしい気分の自分がいたのです。豊かなエネルギーが全身に満ち溢れて、「よーし、やるぞー」とわくわくしている自分がいました。そのとき、これまで頭の中だけで理解しようとしても本当のところでは分かっていなかった「信頼」や「感謝」などの抽象的な言葉の持つ本当の意味や、幸せ感とやる気は一体のものだということが、身体の深いところで「実感」としてわかりました。


<ビジネス内観研修へ>

「内観研修」後、久しぶりに味わう充実感を感じながら出社すると、一目で社員のNさんには「内観」の効果がわかったようでした。私は、ビジネスパーソン対象の「ビジネス内観研修」をつくり、会社の中核研修にしたいことを熱を込めて話しました。・・・


以上が私のはじめての「内観」体験ですが、私には「内観」以降、流れが確実に変わったという実感があります。
よくスポーツの試合などで、「あのプレーで試合の流れが変わりましたね」などと解説者がいいますが、まさに「内観」で人生や仕事の流れが変わったのです。

菊池龍彦





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